CONCEPT


 オーディオ歴の長い方なら、845や211という高電圧真空管を採用したアンプの凄まじい躍動感に魅了され経験が少なくとも一度はあるのではないでしょうか。
 プレート電極に1,000V前後の高電圧を掛ける845アンプや211アンプの音は、500V以下のプレート電圧で使用する6CA7アンプやKT-88アンプの音とは明らかに次元の異なる音質です。どんなに激しい楽曲を再生しても開放的で何の屈託もなく、非常にスムーズに、かつ安定感のあるサウンドが味わえます。しかも、単に"音"だけでなく音場空間も別格です。電源電圧の低いアンプの場合は音が出た瞬間に音像定位が揺らいだり、空気感が重たく感じられがちですが、1,000V前後の高電圧を掛けたアンプは、音が出た瞬間の音場空間の乱れが非常に少なく熱気に満ちたスケールの大きな迫真音場が再生できます。
 これはほんの一例に過ぎませんが、増幅回路に供給する電源電圧は高ければ高いほど音場空間が広く深くなり、真に迫った音場が再生できると確信しています。

 この高電圧電源供給の効果は、半導体アンプに関しても同じ事が言えます。すなわち、パワーの大きなアンプほど高い電圧が掛かっていますから、音の出方がスムーズで、しかもエネルギッシュです。Aクラスアンプの場合は、終段に大きな電流を流す必要があり、素子の発熱量が非常に大きくなります。そしてヒートシンクや電源トランスの大きさには制約がありますから、多くの場合、電源電圧を必要最小限の電圧に抑えた設計になりがちです。そのために「Aクラスのメリットは充分あるにもかかわらず、空気感の重たい再生音になる」という、Aクラスアンプ特有の音質的弱点を感じておられる方も多いことでしょう。
 また、同じ出力の半導体アンプで、終段にバイポーラ・トランジスターを使用した物とFETを使用した物との比較をした場合、FETは飽和電圧が高いため、約10Vほど電源電圧を高く設定せざるを得ません。しかし、この10V余分に電圧を掛けていることが音に反映されて、FETの方が周波数特性や出力インピーダンスの点で不利であるにもかかわらず、軽々とスピーカーをドライブすることができ、バイポーラ・トランジスターより高い評価になりがちです。この例からも、高い電源電圧がいかに重要であるかということがお分かり戴けるのではないでしょうか。

 プリアンプにおいても同じ事が言えます。最近はオペアンプICの性能向上が著しいこともあり、オペアンプICを用いたアンプが非常に増えてきました。このため、ICの耐圧の関係で、電源電圧は±15Vとか、高くても±20Vそこそこになっています。やはりこれでは自ずと再生音に限界が出てしまいます。
 アナログ全盛時には、MMやMCカートリッジのピーク出力電圧に対するマージンを確保するため、フォノ・イコライザーアンプの最大許容入力が重視されました。このため、一般的なアンプでも±30Vとか±50Vという、現行品より高い電源電圧が採用されていました。最新のプリアンプと一昔前のプリアンプを比較試聴した際に、「意外にも昔のアンプの方が音が良かった」というケースがしばしばあります。この場合も、電源電圧の違いが音質に大きく左右しているのではないかと思います。

 以上の理由から、『ブリッジ・オーディオ・ラボ』ではこの"高電圧電源ドライブ"を最重要課題ととらえて、一連の製品群を開発して行きます。 なお、ただ単純に電源電圧だけを云々するならば管球式アンプに到達するのですが、どうしても管球式では限界が感じられます。というのは、真空管にはニッケル電極などの磁性材料が多用されているからです。磁性材料のヒステリシス特性に起因する磁気歪みや、バルクハウゼン効果に起因するノイズは再生音に多大な影響をもたらしますからスムーズな空気感までも忠実に再現するためにはどうしても半導体に頼らざるを得ないと思います。
 半導体アンプの場合、終段は定格電圧を目一杯使用すれば±115Vの電源電圧が可能ですし、ドライバー段の電圧は、プラズマディスプレイ用のトランジスターを使用すれば、±150Vの電源電圧が使用可能となります。ただし、実際には電源電圧変動とか安全度を考慮する必要がありますので、±100V強の電源電圧を使用した半導体アンプ群を開発して行きたいと考えております。

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